日時:9月8日(日)15:00-16:30 Zoomによるオンライン開催
内容:
「英語教育における利他・ケアを考える」西本有逸(京都教育大)
コロナ禍で「利他」や「ケア」が注目されるようになりました。教育(実践)の世界においても潜んでいるのではないか、親和性があるのではないかと考えます。中島岳志は『思いがけず利他』(2021年 ミシマ社)の中で、「利他は自己を超えた力の働きによって動き出す。利他はオートマティカルなもの。利他はやって来るもの。利他は受け手によって起動する。そして、利他の根底には偶然性の問題がある。」と言います。私みたいな門外漢が無謀を承知のうえで利他とケアについて問題提起をします。
「英語教師がケアする必要性:言語学習に不安を抱える学習者に注目して」
杉原颯太(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程)
今日の英語教育は個々の学習者が「何ができるか」を明示する傾向にある(Can-Doリストの活用)。そして、個々の学習者が何ができ/できないのかを示すことは、学習が遅れた時に、より効率的な指導につながりうる(個別最適化された指導計画の作成)。このような教育は「キュア」要素が強いと言える。キュアとは、学習者の不足する部分を専門的な方法によって判別し、「理想状態」へと専門知を用いて強制的に変化させる営みである。しかし、教師によるキュアは多くの不足する部分や深刻な苦手意識を持つ学習者に対しては大量の不足点を提示する行為になりかねない。学習者は大量の改善点を提示されると、まるで人格否定され、改善に対して意欲的でなくなる可能性がある。学習者の中には少なからず深刻な学習不安や苦手意識、学習の遅れを抱える学習者が存在する。そこで、本発表はキュアに対立する「ケア」の視点を提示する。ケアとは、学習者のできることを尊重し、「理想状態」への移行を一時的に棚上げすることで、それぞれの学習者にとっての目標が達成されることを応援する営みである。ケアは、特に、単位習得の危機にある学習者や強い言語不安状態にある学習者に有効である。英語教師はキュアだけでなくケアもするべきだ。特に単位習得の危機にある学習者、言語学習に対して強い不安を抱える学習者に対応するため。そして、英語教育はキュアとケアのバランスを適切に保つことが重要である。
参加費:無料
要予約:下記問合せ先へ前日までにメールによる
問合せ先:西本有逸(yuitsuアットマークkyokyo-u.ac.jp)
00:10